
加熱処理した乳酸菌は、お腹の中で増えることはできません。
それでも加熱処理にこだわったのには、わけがあります。
乳酸菌L-137は、加熱という処理によって、より強く、安定した、新しい乳酸菌HK L-137に生まれ変わるのです。
乳酸菌は生き物なので、その能力は様々な要因で変化します。乳酸菌L-137培養時の免疫賦活能を例にとると、はじめは生育とともに上昇しますが、ある時点で頭打ちとなり、徐々に低下してしまいます。すなわち、一番能力の高い時に乳酸菌を回収しても、生きた乳酸菌の能力は加工や保存の過程で刻々と変化してしまうのです。加工の工程や保存の状態によっては、大きく能力が下がってしまうこともあります。それでは、免疫賦活能の高い乳酸菌を提供することはできません。
この問題を解決するために様々な検討を重ねた結果、「乳酸菌の活性が高い時に加熱処理すること」が、高い活性を維持するために重要であることがわかりました。
乳酸菌L-137は、急激に増殖したあと、少し速度を緩めて穏やかな増殖を続けます。
これに対し、免疫賦活能(IL-12 産生誘導能)は、最初は増殖に伴って増加しますが、
ある程度までいくと徐々に低下してしまいます。
Biosci Biotechnol Biochem 76: 918-922 (2012)
こうした処理を行うことで、実際に摂取するその時まで高い活性を維持することができるのです。
乳酸菌を増やすことだけを考えれば長い時間培養を続けた方が効率的ですが、乳酸菌 L-137の場合は免疫賦活能を重視して、まだ菌の増えきっていない、能力の高い時に培養を止めて、加熱・安定化処理をしています。
加熱処理をする理由はそれだけではありません。乳酸菌L-137は、加熱処理によって免疫賦活能が高くなるのです(下左図)。
加熱処理のメリットは他にもあります。
生きた乳酸菌も、その多くは胃酸によって死んでしまいます。さらに、免疫賦活能も、消化液などの影響で低下してしまいます。ところが、適度な生育状態で加熱処理した乳酸菌L-137の免疫賦活能は、胃酸や腸の消化液の影響を受けにくくなるのです(下右図)。
脾臓細胞に、乳酸菌L-137の生菌体あるいは加熱菌体を作用させて免疫賦活能の変化を調べました。
生菌体に比べ、加熱菌体(HK L-137)の方が免疫賦活能が高い事が分かりました。
脾臓細胞に、人工腸液(膵液)で処理をした乳酸菌L-137の生菌体あるいは加熱菌体を作用させて免疫賦活能の変化を調べました。
生菌体では、人工腸液処理によって免疫賦活能は下がってしまいましたが、加熱菌体(HK L-137)では下がりませんでした。
Biosci Biotechnol Biochem 76: 918-922 (2012)
つまり、加熱処理には「免疫賦活能を高める」「免疫賦活能を安定化させる」という2つの効果があります。こうして免疫賦活能を安定させることによって、実際に口にするその時まで、さらには口からお腹に届くまで高い活性を保つことができるのです。
免疫細胞を元気にするためには、HK L-137と免疫細胞が出会わなければなりません。口から入ったHK L-137は、主に小腸で免疫細胞に出会います。
食べたものから栄養を吸収する腸は、外敵が侵入しやすい場所です。そのため、腸には多くの免疫細胞が集まっており、最大の免疫器官と言われています。特に小腸では特別な免疫組織が発達していて、消化物にまぎれて外敵がいないか絶えず監視しています。HK L-137はこの組織で免疫細胞に出会い、その細胞を活性化させることで全身の免疫力を上げていると考えられます。
このため、HK L-137は充分な活性を保ったまま腸で働くことが重要なのです。